ブラッとするには 丁度良い距離

by スタジオ亜空間

☆ 未来を探して 今日も何処かを ブラッとしています 平岡莉貴 ☆

雨の中


 雨がひどくなってきた。
  すでに雨は3日間降り続いている。
  さすがにテントで眠るのは辛い。風呂にも入りたい。そう思った。
  群馬県草津温泉。
           
  「一人なのですが、泊まれますか?」
  「ご覧のような雨が続いて、温泉が濁ってしまって、申し訳有りませんが、お泊まりはご遠慮願っています」
           
  体よく断られた。
  温泉関係者の名誉の為に断って置くが、決して悪意で言ったのではない。
  旅館というものは、一人旅でも部屋を一つ占領してしまう。これは収益を考えれば避けたいところだ。まして、ドロドロの姿のオートバイツーリングの人間だ。
  断られても不思議ではない。当然の処置だと思う。
           
  地図を出してみる。
  すぐ近くに野反湖が有る。うまい具合にキャンプ場があり、山小屋も有るらしい。
  テントを張る気力は無いけれど、小屋が有れば嬉しい。
  この際、風呂などと贅沢は言っていられない。
           
  標高が高い。うまく行けば雨雲の上に出て、雨が少しでも小降りになるかも知れない、と、メチャクチャ甘い考えでルートを探した。
  野反湖への案内標識を見つけ、登り始める。
  舗装はされていない。
  オンロード仕様のヤマハTX500だったが、快適にダートを走り抜けることができた。
           
  キャンプ場に着く。
  ガランとしたキャンプ場は、やはり雨の中だった。甘い考えは吹き飛んでしまった。
  山小屋は開いていた。
           
  「ごめん下さい。今日は泊まれますか?」
  「いらっしゃい」
           
  60過ぎのおじいさんが一人、出迎えてくれた。
           
  「この雨の中をよく来られましたなあ」
  「ええ。草津温泉で断られたもので」
  「それはそれは。客は誰もいないので、好きなところで寝て下さい」
  「ええ? お客さんは一人もいないのですか?」
  「台風が来てますもので、みんな帰ってしまいました」
  「た、台風??!!」
           
  僕は、不覚にも知らなかったのだが、台風が近づいているらしい。
  どおりで、雨が続くはずだ。
           
  「インスタントですが、暖かいコーヒーをどうぞ」
           
  おじいさんの入れてくれたコーヒーの後味は、僕にとって最高の旅の想い出となった。
           
           
  ぶらり一人で旅に出る。時には気のあった仲間と旅に出る。
  湖を巡る旅。伝説を求める旅。失恋を癒やす旅かも知れない。
  それぞれの季節に、それぞれの旅の形がある。
               
  気ままに旅に出ませんか?
  貧乏旅行。何も気にすることなく、思いっきり旅を楽しもうではありませんか。

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